何故種は値上がりするのか
毎年少しずつ値上がりする種。
日経新聞にはその理由は「海外の採種コストの上昇」とあります。
日本の種はもう海外頼み、国内では採種農家は減少し続けています。
そしてここ20年異常気象が続き、流通すべき量の種を確保するのが困難になっています。
気候による不作の場合、契約農家に対する補償も必要です。
すべてにおいてそうですが、海外生産には為替のリスクとコスト、輸入コストも加算されます。
そして海外労働コストの増加。
日本が経済的に強く海外生産が安かった時代はとっくの昔に終わり、労働コストなら日本の方が安い。
日本なら人件費は安くつくのです。
でも海外生産を日本に移設するには多額の投資が必要となり、実行されることはまずありません。
このままじりじりと値上りが続くと思われます。
種の単価据え置きは中身の量で調整
上の写真は私の大好きなこどもピーマンです。
種一袋638円と単価は同じですが去年は30粒入り、今年は27粒入りでした。
事実上の値上がりと言えるでしょう。
値上がりの文句を言う前に考えよう
今回種が届いて「減ってる!値上がり!」と思いました。
でもちょっと待て。私は去年30粒の種を全部使っているわけではありません。
保険として三分の一の10粒くらい残していました。
使った種は20粒です。
残っていた10粒は結局使うことがありませんでした。
何故でしょう。
ピーマンの発芽は難しく私の園芸技術は平凡。
にもかかわらず播種した20粒の発芽率がとても良かったからです。
品質の良い種なら保険の種は使わないまま終わる。
だったら3粒減っても別にいいではないか。
それより大事なことがあるのではにでしょうか。
種袋に入っている価値は種の数だけではありません。
異品種と交配させない技術、完熟した実から採種する品質。種袋の中でも重ねて適切に包装する管理技術、とくにピーマンは自家採種では先祖返りが多い野菜です。
購入したこどもピーマンの種で先祖返りになったことはありません。
確実に育てたいこどもピーマンの種が638円なら27粒入りでも安い、私はそう思いました
必要なモノを買うという意思表示
「必要なら買う」
これはとても大事な意思表示です。
何故なら作る会社がなくなってしまうからです。
今企業は不採算部門をびっくりするくらい簡単に切り捨てます。
企業自体も経営者や資本先が変わり、かつてはその会社の礎を築いた生産部門や技術であっても容赦なく閉じていきます。
これは生き残りがかかっているので避けられないことなのだと思います。
日本の終身雇用制もなくなり、これから加速される一方です。
日本の採種農家の減少も止まりません。
楽な仕事ではないのに儲からなければ当たり前のことです。
採種農家は一旦廃業すると再開する方はほぼおられません。
もともと採種農家が儲かる仕事なら、ここまでの海外依存にはならなかったはずです。
国産の優れた種を求める方は確かにおられます。
けれどある程度の数が集まらないと産業を支える力にはなりません。
一定数の必ず買う顧客、今求められているのはこれではないでしょうか。
まずは家庭菜園愛好家が購入すること
私もすべての種を購入しているわけではありません。
でも必ず買う種を何品種か決めています。
育てなくても毎年買って苗をつくり、ファンが増えることを願って菜園仲間にお渡ししています。
安ければ良いという理屈もわかりますし、私もそう思うことはたくさんあります。
ですが自分の大切なもの、自分ならその価値がわかるというものにお金を使うことも忘れてはいけないのです。
種の単価が上がっているなら、種を無駄にしないやり方を探れば良いのです。
貴重な種なら簡単に確実に発芽させていかに無駄をなくすかを追求する。
まずはそこから始めたらいいだけの話ではないかと思います
理由がある値上げならそれを受け入れて、むしろ儲かって儲かって値下がりするくらいにしてみたい。
国内の採種農家が廃業をやめ、むしろ増えてきたくらいにしてみたい。
私は種を買い続けたいと考えています。
値上がりには理由がある。
ならば値上げした企業を敵視するのではなく共存を探っていきたい。
自分の大事なものを守るためには行動しなくてはいけないのです。
「いろいろ高いから家庭菜園やめた」ではなく「お金もかかるけど家庭菜園楽しい!」こう言ってもらえるようにまずは私が努力していこうと思っています。